がん治療に運動は必要?運動がもたらす4つの効果と安全に始めるポイント

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「がんの治療中や治療後、運動してもいいの?」と感じる方も多いでしょう。

実は、近年の研究では、運動ががん患者の体力維持や生活の質(QOL)向上、さらには再発予防にも役立つことが分かっています。

本記事では、がん患者さんに運動を推奨する理由と効果、始める際の注意点や、おすすめの運動メニューについて解説します。

目次

がん治療に運動が推奨される4つの理由

治療中に運動して大丈夫なのだろうかと疑問に思う方もいるかもしれません。

近年の研究では、身体を動かすと筋力維持や免疫機能の改善だけでなく、ストレスの緩和や気持ちの安定にもつながるとされています。

ここでは、がん治療に運動が推奨される4つの理由を解説します。

体力・筋力を維持し治療を続けやすくする

がん治療中は、倦怠感や副作用の影響で体がだるいと感じやすく、筋力や持久力が低下しやすい時期です。

筋肉量が減ると、免疫力や代謝も落ち、結果的に治療の継続が難しくなる場合があります。そのため、軽い運動を習慣的に取り入れ、治療を支える土台づくりが必要です。

ウォーキングやストレッチは血流を促進し疲労回復を助けます。小さな動きでも継続すれば、体だけでなく心の回復にもつながります。

手術後の回復を早める

手術後は安静にしすぎると、血流が滞り、肺炎や血栓などの合併症リスクが高まります。予防のためには、術後早期から体を動かすリハビリテーションが重要です。

軽い体位変換や歩行練習などを行うと、血流が促進され酸素の循環が改善します。創部の治りを早め、回復スピードが効果的に高められるでしょう。

手術直後は、無理のない範囲で体を動かす意識が、治療後の生活をよりスムーズにする第一歩となります。

再発リスクを下げる

国内外の研究では、定期的に運動を行う人は、乳がん・大腸がん・前立腺がんなどのリスクが低下すると報告されています。背景には、運動によって体内の代謝やホルモンバランスが整い、免疫機能が改善することが関係していると考えられています。

運動には代謝・ホルモン・免疫の面から総合的に体内環境を整え、がんの発症や再発を防ぐ治療の一部として効果が期待できるでしょう。

参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

精神的ストレスを軽減する

がんの治療中は、体調の変化や将来への不安から、気持ちの落ち込みや強いストレスを感じやすくなります。こうした精神的ストレスを軽減する方法としても、運動は効果的です。

運動を行うと、脳内でセロトニンやエンドルフィンと呼ばれる物質が分泌され、ストレスホルモンの過剰な分泌を抑える働きがあります。2つの物質が安定的に供給されると、ストレス解消や前向きな気持ちを保ちやすくなるとされています。

毎日10分間体を動かすだけでも、達成感や生活リズムの回復につながり、治療中のメンタルケアとして有効です。

がん治療中・治療後に運動を行う際の注意点

がんの治療中や治療後は、体力や体調の変化が大きく、日によってできることが異なります。他の人と同じペースで運動を行うのではなく、自分の体の状態に合わせるのが何より大切です。

主治医と相談しながら、安全で続けやすい運動をみつけましょう。

主治医と相談してから始める

運動を始める前に、必ず主治医に相談しましょう。

がんの種類や進行度、治療内容、合併症の有無によって、行ってよい運動の強度やタイミングが大きく異なります。主治医には、どのような運動を、どのくらいの時間、どの頻度で行ってよいかを具体的に確認しましょう。

医師の指導を受けながら進めれば、安全に継続でき、治療の妨げになるリスクも避けられます。

体調が優れない場合は無理をしない

体調が優れないときは、無理をせず休むことも大切です。特に発熱(38度以上)・めまい・強い倦怠感・息切れ・痛みなどの症状があるときは、運動を中止し、休息を優先します。

ただし、治療内容によっては体を動かす必要があるケースもあるため、判断に迷うときは、必ず主治医に相談して確認しましょう。

体調に合わせて調整しながら、無理のないペースで取り組むことが、結果的に回復を早めることにつながります。

徐々に強度を上げていく

運動は、無理なく続けるのが何より大切です。

がん治療中や治療後は、体力や筋力が低下しているため、運動量をいきなり増やすと、体への負担が大きくなります。

まずは1回10分程度の軽い運動から始めましょう。慣れてきたら、20分、30分と少しずつ時間を延ばし、自分の体調に合わせて調整していきます。

昨日より少し多く動けたという小さな積み重ねが、筋力や体力の回復につながります。

がん治療におすすめの運動メニュー

がん患者さんでも安心して始めやすい運動は、有酸素運動と筋力トレーニングです。

これらは特別な器具や広い場所を必要とせず、体調や生活リズムに合わせて無理なく取り入れられます。2つの運動をバランスよく取り入れましょう。

有酸素運動

有酸素運動は、呼吸を整えながら体を動かすことで、血流を促進し心肺機能を高める効果があります。倦怠感の軽減やストレス緩和、睡眠の質の改善にも役立つとされています。

目安は、1日20〜30分を週3〜5回です。 少し息が弾む程度に、無理のないペースで取り組みましょう。 

  • ウォーキング
    背筋を伸ばし、視線を前に。肘を軽く曲げて腕を振りながら、やや早歩きを意識します。いつもの道を少し遠回りして歩くだけでも十分です。
  • サイクリング
    膝や腰への負担が少なく、長時間続けやすい運動です。日常の移動に自転車を取り入れるだけでも立派な運動になります。

筋力トレーニング

筋力トレーニングは、体の安定性や姿勢を保つために重要な運動です。がん治療中は安静が続きやすく、筋肉量が減りやすいため、軽めの動きでも定期的に行いましょう。

目安は、週2〜3回・1日15分程度です。 動作中は息を止めずに、回数を数えながらゆっくりと行います。 筋肉に軽い張りや心地よい疲労感を感じる程度が、適切な強度のサインです。

  • スクワット
    足を肩幅に開き、ゆっくりと腰を落とします。椅子に座るようなイメージで浅めに行うと、膝への負担を軽減できます。
  • 壁腕立て伏せ
    壁に手をつき、体を倒して押し返す動作を繰り返します。腕や胸の筋肉を安全に鍛えられ、転倒の心配もありません。

家族ができるサポートのポイント

がん治療中の運動は、患者さん本人の努力だけでなく、家族の支えによって継続しやすくなります。ご家庭での参考にしてください。

一緒に体を動かす習慣をつくる

運動を続けるには、頑張らなければと気負うよりも、家族と一緒に取り組む方が大きな支えになります。ウォーキングやストレッチなどを一緒に行うと、楽しみながら続けられ、孤独感の軽減や気分の安定にもつながります。

また、家族がそばで一緒に体を動かすと、患者さんの疲れ具合や体調の変化にも気づきやすくなるのも利点です。

頑張りすぎない雰囲気を作る

がん患者さんにとって、運動は体と心を整える時間です。家族が昨日はできたのにといった言葉をかけると、プレッシャーになってしまうことがあります。

大切なのは、できたことを一緒に喜ぶ雰囲気づくりです。たとえ5分の散歩でも、今日は少し歩けてよかったねと声をかけるだけで、達成感や安心感を感じられます。

患者さん自身のペースを尊重し、 家族が温かく見守る姿勢が重要です。

日常の中に運動を取り入れやすい環境を整える

運動を続けるためには、安全で動きやすい環境づくりも大切なサポートの一つです。自宅の段差を減らす、滑りにくい靴や動きやすい服を準備するといった工夫だけでも、安心して体を動かせるようになります。

また、リビングや廊下などに手すり代わりの家具を配置するなど、運動の準備に時間がかからず、すぐに始められる環境があると、運動が自然と生活の一部になります。

まとめ|運動はがんと向き合う力を高める

がん患者さんにとっての運動は、単なる体力づくりではなく、治療を支え、再発を防ぎ、前向きに生きるための大切な手段です。

軽いウォーキングやストレッチなどを継続すれば、筋力や免疫力を保ち、倦怠感や不安の軽減につながります。体調や治療内容に合わせて無理のない範囲で行い、主治医と相談しながら安全に続けていきましょう。

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